ヴァンプ(Vamp)は、メタルギアの正史シリーズに登場する人物で、 米海兵隊管轄の特殊部隊『デッドセル』の創設メンバー。ルーマニア出身のナイフ使いである。 部隊の初代リーダーであるジャクソン大佐とその妻であるフォーチュンに深い忠誠心を示す。 ナノマシン技術により、受けた傷が瞬時に修復する不死の肉体を持ち、 また他にも様々な超人的な身体能力を見せる。
デッドセル時代の悲惨な経験から、 自分たち兵士を道具のように使い捨てるアメリカ政府、ひいては国家を影で操る『愛国者達』 に対する強い復讐心を持つ。 2010年代には同じく愛国者達を敵とするリキッド・オセロットに従い、 彼の統括する大手PMCのマザーカンパニー『アウターヘブン』の傘下に入っている。
名前 | ヴァンプ (Vamp) |
性別 | 男性 |
出身地 | ルーマニア (România) |
所属組織 | |
主な登場作品 | |
声優 | |
声優 (英語版) | フィル・ラマール |
モーションキャプチャ | 斉藤直樹(MGS4) |
『プラント編』にて登場。 舞台は2009年。後に『ビッグシェル占拠事件』と呼ばれる事件が描かれ、 ヴァンプは”ソリダス・スネーク”率いるテロリスト集団『サンズ・オブ・リバティ』の一員として参加している。 彼は半年前の”惨劇”により壊滅した米国の特殊部隊『デッドセル』の生き残りでもあり、 同じく生き残りであり同部隊のリーダーでもある”フォーチュン”を”姉御(クィーン)”と呼ぶ。 彼は部隊の惨劇以降、政治的な理由で自分たち兵士を弄ぶ政府とそれに同調する民衆に復讐の念を抱いており、 『愛国者達』により支配されるアメリカ合衆国の解体を目論むソリダスと協力関係にある。 本作の”ボスキャラクター”の一人でもあり、プレイヤーキャラクターである”雷電”と敵対する。
プラント編の序盤、テロリストの人質となった合衆国大統領”ジェームズ・ジョンソン”の危機を察知し、 雷電がビッグシェルのB脚に到着すると、 その廊下には大統領の救出にあたっていた米海軍特殊部隊”SEALs(シールズ)”の隊員が横たわり、壁や床には多くの流血の跡が残っていた。 さらに”変電室”からは激しい銃声と悲鳴が聞こえる。 雷電が意を決して室内へ潜入すると、一人の男がSEALs隊員の首筋に噛みつき、血をすすっていた。 その吸血鬼は”ヴァンプ(Vamp)”と呼ばれるルーマニア生まれのナイフ使いであり、 人の頭上を飛び越え、銃弾をかわすほどの超人的な身体能力を持っていた。銃弾を避ける際の動作はバレエの円舞を連想させる。 体温が異常に低いのか、寒くもないのにヴァンプの吐く息は白かった。 さらにゲームを進めると、ヴァンプは雷電の放った弾丸に額を撃ち抜かれるがやがて復活する”不死性”を見せ、 また海面を走る、ビッグシェルL脚の壁面を手を使わずに駆け上がるなど、 人間とは思えない所業をやってのける。
やがて雷電は事件の鍵を握る科学者”エマ・エメリッヒ”を救出するため シェル2中央棟B1に向かうが、その道中でヴァンプが立ちふさがり、プレイヤーは彼とのボス戦に挑むことになる。 ヴァンプはデモシーン同様の超人的な跳躍や弾丸避けでプレイヤーを翻弄しながらナイフ投げによって攻撃してくる。 さらには彼が投げたナイフが雷電の影に刺さると身動きが取れなくなるという 忍者の”影縫い”のような技も披露してくる。 弾丸はオートエイムを使わずに主観攻撃を行うことで当てることができ、 また影縫いには左スティック操作とボタン連打によって呪縛を解き、光源であるライトを破壊することによって対抗できる。 ボス戦に勝利すると、ヴァンプは戦闘が行われたろ過室の”プール(生物反応槽)”に苦しみながら沈んでいく。
しかし、ヴァンプは再び復活を遂げる。 エマがビッグシェルの”オイルフェンス”を渡るのを プレイヤー=雷電が遠距離からの狙撃によって援護する場面にて、 突如ヴァンプが姿を現しエマを羽交い締めする。 プレイヤーはエマに攻撃が当たらないようヴァンプに向かって狙撃を行わなければならない。 ヴァンプのライフポイントを0にすると、頭を撃ち抜かれたヴァンプは海中へと転落するが、 エマは既に彼のナイフによって内臓を貫かれており、 やがて兄”ハル・エメリッヒ(オタコン)”の腕の中で絶命することになる。
以降、作中でヴァンプはプレイヤーの前に姿を現さないが、 本作のエンディングで雷電とスネークが ニューヨーク市内で会話するデモシーンにおいて、背後の遠く離れた場所から こちらを見ているヴァンプを確認することができ、事件後も生き残っていることが示唆された (ポリゴンモデルではなく2Dモデルで表現されている)。 初見では見つけるのが困難な描写であり、隠し要素のようなものになっている。
舞台は2014年。 世界中の大手民間軍事請負企業(PMC)5社を束ねる マザーカンパニー『アウターヘブン』を統括する ”リキッド・オセロット”の部下として登場、 『ビューティー&ビースト』部隊を指揮する。 リキッドのことを”ボス”と呼び敬語を使っている。 今回も、プレイヤーキャラクターである”オールド・スネーク”と敵対する ”ボスキャラクター”の一人である。 MGS2の頃に比べると肌が青白く、ゾンビのような風貌になっている。 他のPMC所属兵士たちと同じく、 戦場管理システム『サンズ・オブ・ザ・パトリオット』の配下にあるが、 やがてリキッドの計画『ガンズ・オブ・ザ・パトリオット』によって解放される。 ACT2『Solid Sun』にて彼は初めて姿を現すが、スネークらもMGS2以降の 彼の消息については把握していなかったらしく、驚いた様子を見せる。 スネークの相棒であるオタコンは、 かつて妹のエマを殺された過去から、ヴァンプに対する激しい憎悪を垣間見せる。
ヴァンプがリキッドの計画に加担することについては愛国者達と敵対するという点で MGS2から一貫しているが、詳しい思想などは本作では語られない。 それよりも、MGS2とは打って変わって自らの”不死性”に苦しんでいる様子が度々見られ、 スネークたちとの戦いには死に場所を求めてその身を投じているように見受けられる。 また、今回はプレイヤーのサポートキャラクターとして登場している雷電について、 サイボーグ化したことで自分と同じく不死のような身体となっているためか、 あるいは過去に敗北したためか、彼に執着している様子を見せる。 高周波ブレードを使う雷電との間では 刃物でお互いの不死身の身体を傷つけ合う壮絶な戦いが繰り広げられる。 相打ちも覚悟の上でヴァンプに刃を突き立てる雷電に対し、 ライバルを見つけ喜んでいるような様子も見せている。
本作において、女性科学者”ナオミ・ハンター”の口より、 ヴァンプの”不死性”がナノマシンによる人体改造によるものであることが語られる。 ヴァンプの体内にあるナノマシンは身体に受けたあらゆる傷を急速に修復してしまうのだった。 かつてナノマシンの第一世代を開発したナオミは ヴァンプのような怪物の存在を自らの罪だと語った。
ACT4『Twin Suns』の終盤、シャドーモセス島の地下基地にて、プレイヤーは彼とのボス戦に挑むことになる。 MGS2同様、驚異的な身体能力とナイフで攻撃してくる。 今回は攻撃全般がヴァンプにはヒットしライフポイントを削ることができるが、 何度ライフポイントを0にしてもヴァンプはナノマシンの力によって復活してしまう。 これは、ヴァンプをCQCで拘束し、ACT2でナオミからもらっていた ナノマシンの働きを抑制する薬が入った注射器を注入することで攻略できる (長時間自力で気づかないとオタコンが無線で教えてくれる)。 注射器を打つとボス戦はクリアとなる。
ヴァンプとのボス戦後、プレイヤーは地下基地へと送り込まれた大量の自爆型”月光”と戦うことになるが、 それと並行して応援に駆けつけた雷電が”メタルギアREX”の上にてヴァンプとの最後の決闘を繰り広げる (画面分割にて演出される)。 一定時間経つと、ヴァンプは雷電から最後の一太刀を浴び、REXの上から転落する。 戦闘を終えた彼らの前にナオミが姿を現し、 ヴァンプのナノマシンによる不死性にも限界が訪れていることを告げる。 ナオミはオタコンに対し 『仇を討つのではなく、終わらせてあげて』と話し、ナノマシン抑制用の注射器を彼(メタルギアMk.Ⅲ)に手渡す。 だがヴァンプは死を渇望するように、躊躇するオタコンから注射器を奪い取ると自らの首へ突き刺す。 苦しみうめき声を上げながらも、どこか安らいだ表情を見せ、ヴァンプはついに死を手に入れるのだった。
出生時期については言及されていない。出身地はルーマニア。 幼い頃、彼が家族とともに協会を訪れた際、爆弾テロに巻き込まれて家族を失う。 ヴァンプは胸に十字架が突き刺さったまま瓦礫の下でまる2日間放置されていた。 その際、彼は自分と家族の血をなめて乾きを癒やすことで生き延びたという。 これは彼が人の血をすするようになったきっかけでもある。
詳細な経緯は不明だが、彼はやがて軍人となり アメリカ合衆国の第43代大統領”ジョージ・シアーズ”の直属に組織された 特殊部隊『デッドセル』の創設メンバーとして参加する。 部隊はもともと政府の施設を抜打ち試験の目的で襲撃する”対テロ訓練部隊”として機能していたが、 リーダーのジャクソン大佐が横領の罪で投獄されると部隊の名は地に落ちる (実際には愛国者達の策略で”冤罪”であった可能性が高い)。 やがてジャクソンが獄死すると、リーダーに忠誠を誓い彼の冤罪を信じていたメンバーは暴走を始め、 部隊の”襲撃”は過激化し、友軍や民間人にまで大勢の死者を出すようになる。
ヴァンプ自身もジャクソンに対しては厚い信頼を寄せていた。 ジャクソンの獄死から間もなく、報復心からか彼の妻であった”フォーチュン”は軍に入るが、 ヴァンプは自分が信頼する人物の未亡人である彼女を喜んで部隊に迎え入れたとされる。 ちなみにフォーチュンにとっての不幸の始まりは 『タンカー沈没事件』で父スコット・ドルフが死亡したことであり、 彼女はその事件の首謀者(に仕立て上げられていた)ソリッド・スネークを”不幸の元凶”としており、 ヴァンプもそれに同調していた。
やがて部隊は暴走の末、戦いの中で壊滅を遂げる。 詳細は不明だが、これがMGS2の劇中で語られる”惨劇”である。 生き残ったのはヴァンプ、フォーチュン、ファットマンの3人のみであった。 その後、3人はアメリカ合衆国(愛国者達)への復讐という点で同調した ”ソリダス・スネーク(かつてのジョージ・シアーズ大統領)”と協力関係を結ぶ。
2009年(MGS2)、『ビッグシェル占拠事件』において デッドセルの生き残りはソリダス率いる『サンズ・オブ・リバティ』の一員として 愛国者達に蜂起するテロに加担する。 しかし、かつて部隊を襲った悲劇も今回の事件も、愛国者達による策略(S3計画)によるものであった。 ソリダスの野望が挫かれると共にフォーチュン、ファットマンも戦いで命を落とす。 唯一生き残ったヴァンプは消息を経つ。
ビッグシェルの事件後、 彼は民間軍事請負企業の登録兵士となり、 マザーカンパニー『アウターヘブン』を統括する”リキッド・オセロット”の傘下に入る。 そして2014年(MGS4)、リキッドの計画(ガンズ・オブ・ザ・パトリオット)に加担し、 再び愛国者達との戦いに身を投じる。 やがて役目を終えた彼は、シャドーモセス島の戦場にてその生涯を終える。
彼は劇中で様々な超人的能力を見せている。
銃弾で額を撃ち抜かれても死なない”不死性”については、 MGS4の項目に記述したとおり、体内に仕込まれたナノマシンの力により 受けた傷を直ちに修復できるような人体改造を受けているためである。 しかし負傷が大きい場合には修復に時間がかかるようで、暫くの間気を失う。
バレエを踊るような動きで銃弾を避けることができることについては、 MGS2においてヴァンプが自らの口で『人間の筋肉は雄弁だ』と語り、 敵の筋肉の動きを注意深く観察することで先の動きを読んでいることが明かされている。 同作では、身体を圧迫するスニーキングスーツを装備した雷電の筋肉の動きについては 『変わっている』と話し、完璧に読むことができないようであった。
またMGS2で彼は手を使わずにビッグシェルの支柱を駆け上がる。 これについてMGS4において、 オタコンが”カエル兵(ヘイブン・トルーパー)”が壁に貼り付けることについて 電気的に中性な分子間に働く相互作用”ファンデルワールス力”を利用した装備を身につけているのではないかと推測した際、 それを聞いたオールド・スネークがかつてのヴァンプも同じ技術を使っていたのではないかと話している。 しかし、同じくMGS2で彼が海面を走っていた原理については言及されていない。
MGS2のボス戦においては 敵の影にナイフを突き刺すことで動きを止める、忍者の”影縫い”のような技も披露している。 これについて同作の無線でオタコンが、 ナイフを投げる際の声と動き、そして刃に当たる光の反射を利用することで敵に強烈な暗示をかけているのではないか という見解を示している。 『METAL GEAR SOLID 4 DATABASE』の『影縫い』の項目では 『相手を催眠状態に落とし、身動きができなくなったと錯覚させている』と説明されている。
彼は”バイセクシャル(両性愛者)”である。 MGS2のイロコィ・プリスキン(=ソリッド・スネーク)との無線によると ヴァンプはデッドセルのリーダーである女性兵士”フォーチュン”と肉体関係を持っているようだが、 2007年の『タンカー沈没事件』で死亡した米海兵隊司令官”スコット・ドルフ”の愛人であった噂があるらしい。 ドルフはフォーチュンの実の父親でもあるため、 同作のプレイヤーキャラクターである雷電はフォーチュンの心境について疑問視した。 それに対しスネークは他人の絆をよそから測ることなどできないと話し、 ヴァンプとフォーチュンは恋人でも友人でもない奇妙な人間関係を持っていることが示唆された。
MGS2におけるイロコィ・プリスキン(=ソリッド・スネーク)の説明によると 彼の”ヴァンプ(Vamp)”という通り名は”吸血鬼(Vampire)”ではなく 彼がバイセクシャルであることに由来するらしい。 ”Vamp”には男性に対してセックスアピールをする女性、”妖婦”というような意味があり、 ”Vampire”とのダブルミーニングであると思われる。
ゲーム中に使用するカードの一つとしてMGS2より『ヴァンプ』が登場。
ゲーム中に使用するカードの一つとしてMGS2より『ヴァンプ』が登場。 性能の異なる『ヴァンプ+』のカードもある。
また、歴代シリーズのボスキャラクターとバトルができる『アリーナモード』にて、 MGS2のヴァンプと対戦することができる。 音声はMGS2の置鮎龍太郎氏の音声が流用されている。 様々なカードによってヴァンプの戦闘スタイルが再現されている。
MGS4に収録されたオンライン対戦モード(通称”MGO2”)にて、 同作からヴァンプがユニークキャラクターとして参戦。 高速で移動できる、死亡した際にその場で復活するようにリスポーンできる、 ローリング・サイドステップ・バックステップにより劇中のバレエを踊るようなアクションが再現されている、 投げナイフが使用できるなどといった様々な特性を持つ。
本サービスは2012年6月13日をもって終了している。
MGS2のデモシーンではモーションキャプチャ手法が用いられているが、 同作のエンドクレジットではモーションキャプチャを務めたアクターの名前とキャラクターの対応が明記されていないため 彼のアクターは不明である。
ヴァンプの日本語版声優について、MGS2では置鮎龍太郎氏が務めているが、 MGS4では映画監督で俳優としても活躍する塚本晋也氏に変更になっている。 これについて、かつてコナミ内小島プロダクションの公式サイトで配信されていた ネットラジオ『HIDECHAN! Radio』の第17回(2006年02月03日配信)において、その理由が言及されている。 この回では塚本氏がゲストとして招かれており、 小島監督はトークの中で、MGS2制作時に塚本氏が出演できるという話になったことを受けて 彼に合わせてヴァンプというキャラクターを作成していたこと、 そして塚本氏の仕事の関係で出演が実現できなかったことを明かした (台本にも『ヴァンプ(塚本晋也)』と書いていたらしい)。 このラジオの収録時、当時制作初期だったMGS4のキャスティングは決定しておらず、 小島監督はそのトークの中でMGS4へ塚本氏に出演してほしいとも話していた。
ちなみに塚本氏は『メタルギアソリッド(1998年)』のテレビCMにおいて ナレーション(タイトルコール)を担当している。 また小島監督自身も若い頃から塚本氏のファンであり、 同氏が監督した映画『ヴィタール(2004年)』のオーディオコメンタリーを担当したり、 自身の希望により対談を実現させるなど、様々な交流がある。