愛国者達(英語:The Patriots)は、 20世紀の終わりから数十年に渡りアメリカ合衆国をはじめとした国家を影で支配してきた闇の存在。 ホワイトハウスの意思決定に対しても大きな影響力を持ち、莫大な資金を動かして様々な計画、技術開発などを推し進めてきた。 合衆国大統領に至っても、選挙はただのショーでしかなく、愛国者達の意思で選定が行われた。 徹底した情報統制が行われ、存在を認知できる人間はごく少数であった。 その正体は、かつて冷戦の時代にアメリカで誕生した非政府諜報機関『サイファー』の意志決定を託された”AI(人工知能)”。 やがて人間の手を離れた愛国者達という一つの意志が、何重にも渡るカットアウトを利用して世界中の人々の行動を無意識下で誘導していたのだった。
組織『サイファー』は1970年、CIAに在籍したゼロという男によって創設された。 サイファーの目的は、かつて大戦中の英雄であったザ・ボスという戦士が思い描いた”隔たりのない世界”を実現すること。 しかし、組織の人間たちは同じ目的を持ちながらもそれぞれの解釈により対立・抗争を始めた。 その抗争の末、ゼロは自らの代行を人工知能=AIに委ねることを決断する。 彼はその戦いの中で多くの裏切りや痛みを経験し、人間に自らの意志を託すことを諦めていた。
意思決定AIシステム『愛国者達』は1970年代の後半に産声を上げた。 システム創造の中心となったのは、サイファーの創設メンバーの一人であり、 抗争で身体を患ったゼロからその命を受けたドナルド・アンダーソンという男。 『愛国者達』という名称も、当初AIシステムの管理プロジェクト名としてアンダーソンが命名したものである。 システムの中枢となるAIは『J.D.(ジョン・ドゥ=名もなき男)』と呼ばれ、 それが『G.W.(ジー・ダブル)』、『T.J.(ティー・ジェイ)』、『A.L.(エー・エル)』、『T.R.(ティー・アール)』という他の4つのAI群を束ねるネットワークが構築された。 以後の歴史では、これらのAI群がアメリカの経済、政治、法律、規範、文化といったあらゆる”情報”を管理することになる。 AIはそれぞれ役割分担を持っており、米国の核兵器を含む大量破壊兵器の管理やゼロの居所といった情報の管理はJ.D.が単独で行っていた。
愛国者達による意志決定はあまりに無感情で冷たいものだった。 ゼロから受け継いだ『力を管理する』という意志に対し、 AIは合理的であり、なおかつ自らの糧にもなる答えを導き出した。 まず『S3計画』によって世界中の人々の行動を無意識化で操るシステムを創造し、 人間一人ひとりの『言葉の力』を統制することに成功。誰にも気づかれることなく、世界から真の自由を静かに奪い去った。 そして2010年代に入ると、愛国者達は各国への民間軍事請負企業(PMC)の正式採用を推進し、 さらにサンズ・オブ・ザ・パトリオット(SOP)と呼ばれる戦場管理システムを導入することによって 『合理的な戦争』を資本主義の商品とするビジネスモデル、通称"戦争経済"を浸透させ、莫大な利益を生む循環を世界に創出した。 この結果、冷酷なシステムのもと、ゼロの意志である『力を管理すること』は実現した。 政治的、宗教的などあらゆる対立で発生する戦争の大半は、次第に雇われ者(PMC)同士の代理戦争に移り変わっていった。 SOPによるリアルタイムな戦場制御により、命を消費する戦争は合理的なビジネスへと変貌した。 この終わることのない連鎖はAIにとって最大の糧、いわば生殖方法となり、 後にビッグボスはこのAIの意思決定を「新たな生命の誕生」と語った。
世界中の人間が頼る秩序や文化そのものになった愛国者達だが、誕生から40数年後、ついにこの世から姿を消す。 愛国者達を終焉へと導いたのは、皮肉にも組織が自ら生み出した力たちだった。 それはビッグボスのクローンである ソリッド・スネーク、リキッド・スネーク、ソリダス・スネーク、 愛国者達の一員でありながら密かにゼロに反旗を翻していたオセロットとEVA(エヴァ)、 そしてかつて愛国者達のためにナノマシン技術を開発したナオミ・ハンターであった (詳しくはガンズ・オブ・ザ・パトリオットを参照)。