ネタバレを含みますのでシリーズを未プレイの方は注意して御覧ください。
『METAL GEAR SOLID V THE PHANTOM PAIN』のラストにおいて 主人公であるヴェノム・スネークの正体がサプライズ的に明かされ発売当時に賛否両論となりましたが、 メタルギアシリーズにおいては過去のシリーズを見てみてもずっと同じ方向性で同様の仕掛けが練られていたように思います。 一般的にゲームの操作キャラクターとしては、ほとんど過去がなく自ら何も語らないパターンと、 すでに人物が完成し自分語りをする人間の行動シーンのみをプレイヤーが担うパターンが代表的に挙げられますが、 メタルギアシリーズの主人公は常にその中間でバランスを保つよう工夫が凝らされてきました。 重厚なストーリーのイチ登場人物としての立場と、プレイヤーの分身であるという立場を 両立させるためのバランスです。
『METAL GEAR SOLID 2 SONS OF LIBERTY』では主人公がスネークから 経歴のない新人兵士”雷電”に切り替わり、プレイヤーはスネークのいる世界を傍観する立場になりました。 『METAL GEAR SOLID 3 SNAKE EATER』ではプレイヤーたちの『またスネークを操作したい』という要望に応えつつ、 しかもストーリー的には旧作と繋がりを持ちながら再び若い兵士を主人公とするための面白い仕掛けが施されました。 主人公が過去作と同一人物のままとなった『METAL GEAR SOLID 4 GUNS OF THE PATRIOTS』、『METAL GEAR SOLID : PEACE WALKER』においては 他作に比べると主人公がプレイヤーの分身であるという要素が薄れていますが、 逆に長く続くシリーズであることを活かして 過去作におけるプレイヤー(=スネーク)のゲーム的体験をフラッシュバックさせるような演出が多く盛り込まれていました。 またゲーム中での主人公の行動について、良いことも悪いこともあくまで 別人格ではなくプレイヤー自身が行っていると強く印象づけさせるようなつくりもシリーズで一貫しています。
『MGSV:TPP』の主人公ヴェノム・スネークは、 先述した過去全作の要素をすべて踏襲している集大成的な存在に思えます。 ゲームの発売前、小島監督は『映像表現の技術が向上したことで、今回のスネークはセリフよりも表情で語る』といったことを話していましたが、 これもまたゲームの主人公としてのスネークの完成度を高めているように思えます。 映像技術が発展したことでよく喋るプレイヤーキャラクターが増えてきた中、 スネークは逆に喋らなくてもプレイヤーに受け取り方や共感の幅を持たせながら『語る』ようになったのです。
最後にちょっと論点はズレますが、筆者は『MGSV:TPP』のゲームプレイ中盤くらいで 主人公の正体について何となく感づいてしまったのですが、その上で反感どころかむしろさらに面白さを感じてゲームを進めていました。 主人公の周りの様々なキャラクターが彼を英雄ビッグボスだと信じて接してくる中で 過去作をプレイしたプレイヤーだけが何とも言えない違和感を感じさせられる不気味な状況が 本作のダークな雰囲気のストーリーととてもマッチしていて非常に楽しめました。 シリーズ全体を通してみても、ゲームの象徴(アイコン)としてもイチ登場人物としても、 ヴェノム・スネークはとてもお気に入りのキャラクターです。