サイファー(英語:Cipher)は、 冷戦の時代に誕生したアメリカの非政府諜報機関で、やがて21世紀の世界を電子のネットワークで支配することになる『愛国者達』の前身。 サイファーは政府・民間問わずアメリカ合衆国のさまざまな重要機関に構成員を張り巡らせ、 莫大な秘密資金を後ろ盾に、国家を影で掌握する強大なシステムを構築していった。
その創設は1970年。 1964年にCIAにより実施されたスネークイーター作戦において大戦中の伝説的な英雄ザ・ボスが抹殺されたことがすべての発端となる。 真の愛国者であるザ・ボスの死を悲しんだ人々が、彼女の望んだ世界を実現するという目的のもとに集い、この組織は結成された。 創設の中心人物はかつてザ・ボスとSAS所属時に同期で友人であったゼロという男。 彼とともに組織を結成した創設メンバーはザ・ボスの最後の弟子であるビッグボス、 そしてスネークイーター作戦の関係者であるドナルド・アンダーソン、クラーク、オセロット、EVA(エヴァ)であった。 創設にはオセロットがCIA長官をはじめとしたCIA上層部の人々を抹殺して賢者達から奪った賢者の遺産が資金として用いられた。 これはスネークイーター作戦でザ・ボスを利用して死に追いやったCIA(賢者達)への復讐でもあった。 賢者達の終焉と愛国者達の前身であるサイファーの発足が重なるのはこの為であり、後の歴史では賢者達が愛国者達と改名したという見方がされることもある。 なお、創設時には『サイファー』という呼び名も使われていなかった。
ザ・ボスの『世界をひとつにしたい』という願いを実現するために ゼロが求めたのは『世界中の力を”管理”すること』であった。 兵器や銃火器といった軍事力を管理するだけでなく、 彼は個人が発信する言葉や文章に至るまでのあらゆる”情報の力”を徹底管理することを目指した。 そしてゼロが辿り着いた答えは、人々の”無意識”を統制するシステムの創造であった。 この意志はやがて愛国者達に受け継がれ『S3』や『サンズ・オブ・ザ・パトリオット(SOP)』と呼ばれるシステムの完成により現実となる。 しかしサイファーは活動の中で多くの分裂を起こし、その内部抗争によりゼロは身体を患い、自分の手で意志の実現を成し遂げることができなかった。
一つ目の分裂は、ゼロとビッグボスによる対立であった。 そもそもゼロが創設にあたりビッグボスをメンバーとしたのは彼が親友であったことも大きいが、 最大の理由はスネークイーター作戦での活躍で世界を救った英雄となったビッグボスを組織のカリスマとして掲げるためだった。 現に、オセロットとEVAが加わったのも ビッグボスに対する特別な想いが動機である。 ゼロがビッグボスを組織の象徴(イコン)として祭り上げ 多くの有力者の指示を獲得するために利用することに対して、ビッグボスは次第に反発していった。 そして彼の心が離れていくことを感じたゼロはビッグボスにも知らせずに 『恐るべき子供達計画』を始動。ビッグボスのクローンベイビーたちを生み出すことで組織の新しい象徴とした。 この一件を知るとビッグボスは激怒し、ゼロと決定的に対立、組織を離れた。 これは1972年のことで、ビッグボスは組織結成から1~2年で脱退をしたことになる。
ビッグボスは国境なき軍隊、ダイアモンド・ドッグズ、そしてアウターヘブンを組織し、 彼と彼の仲間たちはどこの国家にも束縛されない存在でありながら、世界の軍事力の重要な一角を担う存在へと成長、 人々の自由意志を奪おうとするゼロのシステムを軍事力で覆い尽くそうと戦い続けた。 ゼロはビッグボスへの友情を捨てることはなかったが、 ザ・ボスへ近づこうとする思想において二人が生涯相容れることはなかった。 やがてビッグボスは自らの軍事力をもってサイファーへのクーデターを起こす。 これが後に言う『アウターヘブン蜂起』、そして『ザンジバーランド騒乱』である。
もう一つの分裂は、かつてゼロの部下であったスカルフェイスと呼ばれる男によって引き起こされた。 ゼロはサイファーの実質的な軍事力・実働部隊としてかつて自らの手で創設していた XOF(エックス・オー・エフ)という部隊を利用しており、 その指揮官を任されていたのがスカルフェイスであった。 彼もまたザ・ボスの遺志の解釈という点で ゼロ、ビッグボスと対立した。 ゼロはスカルフェイスの襲撃により脳に損傷を負い、 やがてその意志を愛国者達に託して覚めることのない眠りについた。 そしてスカルフェイスも自らの理想を実現するための戦いの中で生命を落とした。
ザ・ボスへの想いを巡った抗争の果てに生き残ったのは、人から人へ、そして人からシステムへと伝達され形骸化した意志だけであった。 それはもはやザ・ボスの意志でも、ゼロの意志でもなかった。 ゼロの代理人となった愛国者達は、 貪欲にテクノロジーを吸収して肥大化し、世界中の人々の無意識と経済を支配する強大な怪物へと成長していくのだった。