ケネス・ベイカー(Kenneth Baker)は、メタルギアの正史シリーズに登場する人物で、 アメリカ合衆国出身の実業家。 米国の軍需産業のトップ企業『アームズ・テック』の社長を務める。 冷戦後の軍縮に伴い経営が悪化した会社の命運を賭け、 米国防総省と”癒着”し『メタルギアREX』の開発計画をスタートさせる。
2005年の『シャドーモセス島事件』において 当時メタルギアREXの演習のために現地を訪れており、 特殊部隊FOXHOUNDが率いるテロリスト集団の人質となる。 やがて米・国防総省により送り込まれたエージェント”ソリッド・スネーク”に救出されるが、 国防総省の陰謀により殺人ウイルス『FOXDIE(フォックスダイ)』に感染して死亡する。
名前 | ケネス・ベイカー (Kenneth Baker) |
性別 | 男性 |
国籍 | アメリカ合衆国 (U.S.A)[注] |
年齢 | 60代(2005年/MGS1)[注] |
身長 | 168cm(2005年/MGS1)[注] |
所属組織 | アームズ・テック |
主な登場作品 | |
声優 | 藤本譲 |
声優 (英語版) | アラン・ルーリー |
舞台は2005年。当時60代[注]。 兵器開発会社『アームズ・テック』の社長。脚に障害を抱えているのか、杖をついている。 本作では後に『シャドーモセス島事件』と呼ばれる事件が描かれ、 彼はアームズ・テックが開発していた新型核兵器『メタルギアREX』の 演習を行うためシャドーモセス島の基地に訪れていたが、 演習の支援のために参加していた特殊部隊『FOXHOUND』によるテロに巻き込まれ人質となっている。 彼を救出することも、プレイヤー=ソリッド・スネークのミッションの一つになる。
テロリストに強奪された新型核弾頭を使用可能にするための起爆コード(PAL)の一つを彼が知っており、 サイコ・マンティスのような超能力者の読心を回避するための”精神手術”を受けていたが、 それも虚しくリボルバー・オセロットの過酷な拷問により喋らされてしまった。 その上、オセロットは 腕も折れボロボロなベイカーの身体をワイヤーで拘束し、ワイヤーに触れればC4爆弾が爆発するというトラップを作り上げ、 彼をスネークとの一騎打ちの決闘を行うための囮として利用した。 プレイヤーはベイカーを傷つけないように気をつけながらオセロットとのボス戦に挑まなければならない。
スネークに救出されたベイカーは、 テロリストが核発射の準備を終えてしまった場合の最終手段について 彼の会社でメタルギアREXの開発チーフを務める技術者ハル・エメリッヒに協力を仰ぐよう促し、彼の居場所を教えてくれる。 また、彼は核弾頭の起爆コードを緊急解除する鍵(PALキー)を 一緒に捕まっていた女性兵士メリル・シルバーバーグに託しており、 彼女と無線でやり取りをしていたと話す。 それを聞いたスネークはベイカーにメリルの無線の周波数を尋ねるが 一度『ド忘れした』とした後、思い出したように『パッケージの裏に載っているはずだ』と発言する。 これは本作のゲームソフトメディアが収められたパッケージを指しており、 ゲームの攻略ヒントが現実世界にあるというユニークな仕掛けになっている[注]。
『核の時代は20世紀末に終わったはず[注]』とするスネークに対し、 使用済み核燃料は今もなお増え続け、それらがずさんな管理をされる核物質貯蔵庫の実態や、 冷戦終結後にロシアの核技術者が職にあぶれている現実を突きつけ、 どんな小国やテロ集団でも核武装できてしまう時代が訪れたと告げる。 彼は『核廃絶の実現など不可能』とし、『平和』は幻想だと語る。 その上で、核抑止論を保つための圧倒的な兵器(メタルギア)が必要だとし、 メタルギアREX開発に至った会社の都合についても語り始める。 冷戦終結後の兵器開発業界は不振で、アームズ・テックも例外ではなかった。 そのため、同社の生き残りをかけた切り札として、米国防総省と裏で協力関係を結ぶことで正式な手続きをスキップし、 そこから得た闇の資金によってメタルギアREX開発をスタートさせていたのだった。 国防省の研究機関”DARPA(ダーパ)”の局長である”ドナルド・アンダーソン”には多額の賄賂を渡していたとされる。 これについてスネークは”癒着”と非難するが、ベイカーは『軍産複合体と呼んでくれ』と返す。 シナリオを進める中で、本作の舞台である基地がアームズ・テック社が 新兵器開発のために所有しているものであることも明かされている。 ちなみに国防総省の長官ジム・ハウスマンのこともよく知っているようで、 彼を”ジム”と呼んでいる。
話を聞いたスネークは、メタルギア自体は既存技術であるはずと話す。 それを受けメタルギアREXの真価について語りだそうとするベイカーだったが、 彼は突然、苦しみの声を上げ、スネークの眼前で謎の死を遂げる。 シナリオの終盤、これは『FOXDIE(フォックスダイ)』と呼ばれる殺人ウイルスによるものものであることが明らかとなる。 国防総省の長官ジム・ハウスマンは真実を知る関係者やテロリストたちを暗殺しメタルギアREXを無傷で回収するために スネークの体内に密かにFOXDIEを仕込んでいたのだった。 ベイカーは死に際に『まさか、例の!?』と発言しており、FOXDIEの存在を知っているようだった。 国防総省の思惑にも気づいたようであったが、それをスネークに伝える前に息絶えた。
ちなみに、彼はスネークとオセロットの戦闘に乱入した サイボーグ忍者がゲノム兵の実験体であったことや、 FOXHOUNDのメディカルスタッフであるナオミ・ハンターについて詳しく知っている様子であり、 米政府や軍の事情に精通している人物であったことが示唆されている。 また、彼はメタルギアREXの演習データを収めた光ディスクをオセロットに奪われず守りきっており スネークはそれを意図せず入手することになるが、 結局、最終的にそれはオセロットの手に渡っている。
舞台は2014年。すでに故人であり、本人の登場はなし。 ACT2『SOLID SUN』でプレイヤーキャラクターのオールド・スネークと ナオミ・ハンターが 殺人ウイルス『FOXDIE』を話題とした時、 9年前のシャドーモセス島事件にてベイカーが同ウイルスで死亡したことに触れている。 また、同デモシーンで△ボタンを押すと発生するフラッシュバック(回想)で MGS1時のベイカーの姿が映し出される。
ベイカーがくれるヒント『パッケージの裏』について、 MGS1のゲームアーカイブス(ダウンロード版)の場合は手元にパッケージがないが、 ゲームアーカイブスではPS3、PSPともに画面上で『解説書』を見ることができ、 MGS1はそこにパッケージの画像も含まれている。 また、公式サイト(2019-06-20 現在)にも掲載されている。
1990年に発売された『メタルギア2 ソリッド・スネーク』では 当時から見た近未来(1999年)には世界で核が全廃され、その中で軍事国家『ザンジバーランド』が 唯一の核武装を遂げるというフィクションを描いている。 その続編のMGS1では 発売した1998年当時にもなお世界に二万六千発の核兵器が存在していることに苦言を呈しつつ、 物語として現実とのギャップを埋めるため、 ケネス・ベイカーの口から20世紀末の核兵器の現状について語られている。