セシール・コジマ・カミナンデス(Cécile Cosima Caminades)は、メタルギアの正史シリーズに登場する人物で、 フランス出身の鳥類学者。普段はパリを生活の拠点としている女性であり、いわゆる”パリジェンヌ”[注]。 愛国者であり、祖国の文化について強い誇りを抱いている。 奔放な自由人に見える言動が多いが、フランスの政治や歴史について真摯に考える聡明な一面も持つ。 動物の鳴き真似が特技。
1974年にバードウォッチングのため中米のコスタリカを訪れていたが、 米国・CIAの『ピースウォーカー計画』による軍事介入に遭遇し、捕らえられてしまう。 やがてCIAへの諜報活動のため現地へ潜入していた兵士”ビッグボス”に救助され、 彼の率いる『国境なき軍隊(MSF)』のマザーベースに導かれる。 マザーベースには長期に渡って滞在しており、その間ビッグボスのミッションをサポートした。
日本語版の声優は小林ゆうが務める。
名前 | セシール・コジマ・カミナンデス(Cécile Cosima Caminades) |
性別 | 女性 |
年齢 | 20代(1974年)[注] |
国籍 | フランス(France) |
出身地 | フランス パリ(Paris)[注] |
所属組織 | 国境なき軍隊 |
主な登場作品 | メタルギアソリッド ピーズウォーカー |
声優 | 小林ゆう |
声優(英語版) | キャサリン・テイバー(Catherine Taber) |
モデル | セシール・カミナデス(Cécile Caminades)[注] |
舞台は1974年。 第二章『英雄の幻影』にて初めて登場。 本作のプレイヤーキャラクター”ビッグボス(=スネーク)”は 女性科学者”ストレンジラブ”の研究施設を目指して中米・コスタリカの熱帯雲霧林の中を進む道中、 下着姿で木にもたれて疲れ切った様子のセシールと遭遇する。 彼女は鳥類学者であり、現地には観光客として”バードウォッチング”をするために訪れていたのだが、 本来戦争など行われていないはずのコスタリカにて展開されていた謎の武装集団によって捕らえられていた。 スネークが発見した時、セシールは必死の思いでその武装集団の施設から逃げ出してきたところであった。
本作ではスネークと、彼の率いる『国境なき軍隊(MSF)』が 中米へと軍事介入し、米国・CIAの『平和歩行計画(ピースウォーカー計画)』とそれを利用するKGBの陰謀に巻き込まれていく一連の事件が描かれる。 先述の武装集団は同計画のためにCIAが展開しているものであった。 第一章において、スネークはKGBの”ガルベス”から依頼を受けた際、 彼から提示された”テープ”に録音されたある”声”をきっかけとしてコスタリカでのミッションを引き受けることとなったのだが、 それを録音したのがセシールであった。その時、彼女は森で鳥(ケツァール)の鳴き声を録音しており、 偶然CIAの施設に近づいてしまったのだった。 彼女は捕らえられた際、身分証明書も含め、下着以外のあらゆる持ち物を没収されていた。 先述のテープの件もあり、困り果てたセシールをスネークは救助。 彼女はMSFのマザーベースへと保護されることとなる。 それに伴い、ゲームシステム上もマザーベーススタッフとして追加される(『マザーベーススタッフ』の項目を参照)。 救助される際、セシールは”フルトン回収”されているが、特に怖がることもなく楽しんでおり 『鳥の気持ちが少しはわかった』と話している。 また、テープに録音されていた声はかつてのスネークの師である”ザ・ボス”の声であるが (実際にはストレンジラブが開発した人工知能(AI))、 後にセシールは彼女の声を『背筋がゾワッてするほど素敵な声』と語った。 ちなみに、セシールは鳥の声を録音するために日本のソニーが発売した『カセットデンスケ[注]』を使用している。
スネークはやがてストレンジラブの研究施設に到着するが、 ”ヒューイ”から預かっていたIDカードは既に無効化されており、侵入することができなかった。 そこで彼は、セシールが施設から逃げ出すためにIDカードを奪っていたという話を思い出す。 だが彼女は逃げてくる途中で再びそのカードを敵に奪われていた。 そのため『奪った兵士がオレンジ色のジャケットを着ていた』、『その場所ではケツァールが鳴いていた』というセシールの記憶を元に スネーク=プレイヤーはIDカードの奪取を試みることとなる。 その際、プレイヤーは参考のために無線でセシールによるケツァールの”鳴き真似”を聴くことができる。 鳴き真似が得意というセシールが『鳥類学者ならこのくらい出来なくちゃ』と話すと スネークは『たいした女だ…』と漏らしていた。 だが彼女は鳥類以外の鳴き真似も得意である(詳しくは『動物の鳴き真似』の項目を参照)。
デモシーンやブリーフィングファイルの会話によって、彼女が施設に捕らわれていた時の様子についてうかがい知ることができる。 施設では常にストレンジラブと2人きりであり、彼女から身辺の世話を受けていた。 拘束されたままではあったがその扱いは丁重であり、食事を与えられ、 彼女の手で毎日身体も洗ってもらっていた。 だがブリーフィングファイルの『人工知能研究所>施設と警備』にて セシールは身の危険を感じていたと語り、ストレンジラブが同性愛者であることをスネークに明かしている。 彼女はストレンジラブから気に入られてしまったらしい。 同じく『人工知能研究所>ストレンジラブ博士』で セシールはスネークが女性同士の関係に興味があるのではないかと茶化すが、 逆に『よろしくやっていたようだな』と指摘されると慌てた様子で誤魔化しており、 先述の入浴以上の何かがあったことが示唆されている(話しぶりから、当人も満更ではないのかもしれない)。 スネークは誤魔化す彼女に『図星か』とつぶやいていた。
彼女は施設で1ヶ月耐えれば解放するとストレンジラブから約束されていたのだが、 同じくブリーフィングファイル『人工知能研究所>施設と警備』にて コスタリカの鳥類分布について学会で発表する予定があり、その期日が迫っていたため、危険を顧みず脱走を試みたのだと明かしている。 だがマザーベースに保護された彼女は『この身体が無事ってだけでも幸運だった』と学会をきっぱり諦める意志を示している。 その際、セシールの『あなたは(気持ちの切り替えが)早くないの?』という質問にスネークがやや困惑する場面があり、 彼女の性格との対比によってスネークがザ・ボスとの過去に囚われ続けていることが示唆されている。
先述のIDカードの件が解決した後にセシールが物語の鍵を握ることはないが、 彼女はMSFのマザーベースに留まっており、 ミッション中に無線するとプレイヤーを鼓舞するような声を聴くことができる(鳥に絡めたセリフが多い)。 またブリーフィングファイルでは、鳥類に関する知識のほか、 彼女の祖国フランスに纏わる様々な知識や人生観について話を聴くことができる。 その中ではスネークと議論を繰り広げる場面もあり、 現実でも起きている事柄と本作のストーリーとの関わりについて、プレイヤーに思慮の幅を広げさせてくれる役割を担っている (詳しくは『フランス愛』の項目を参照)。 一方、普段は基本的にはおしとやかな話し方をするが、実はとてもノリがよく明るい性格であり、 コミカルな内容の会話も多い(特に調子者な”カズヒラ・ミラー”が絡む場合にはつられてテンションが高くなる)。 話に夢中になると周りが見えなくなり激昂するなど少々変わり者な一面も多々見られる。 ブリーフィングファイル『フランス>ワイン』で ベロベロに酔っ払って人が変わったようなセシールと それをなだめるスネークの会話は特にコミカル色が強く、ファンの間でもネタ扱いされている。
彼女は本作のラストに至るまでマザーベースを去っておらず、長期に渡ってそこで生活をしている。 その様子が詳細に描写されることはないが、 カセットテープ『パスの日記』では セシールがMSFの仲間たちやパス、アマンダらと 交流する様子の一端を垣間見ることができる (『料理』、『恋愛』の項目も参照)。 『メタルギアZEKE』とのボス戦でセシールに無線すると パスとバードウォッチングをする約束をしていたことが明かされる。
ちなみに、先述したセシールが森で声を録音した”テープ”について、 当初ガルベスがスネークのもとを訪れた時に 彼と同行してきた少女”パス・オルテガ・アンドラーデ”の友人が録音したものと説明されていたのだが、 セシールがマザーベースに回収されると2人に面識がないことが判明する。 実はこの疑問がこっそり解決しないまま第四章『幻想の平和』の完結を迎えることが、第五章への伏線になっている (詳しくは『パス・オルテガ・アンドラーデ』の頁を参照)。
本人は登場しないが、 カセットテープ『ブリーフィング>経緯3:マザーベース スタッフ達の査察受け入れ態勢』にて、 マザーベースへのIAEAの核査察団受け入れに際してヒューイ以外の民間人を全員帰国させるという話題になると、 スネークが『あのパリジェンヌもか?』と発言したのに対してカズヒラ・ミラーが『もちろんだ』と返す場面があり、 少なくとも本編の舞台である1975年3月16日よりも前に、セシールがフランスに帰国したことが示された。
舞台は1984年。本人の登場はないが、 ダイアモンド・ドッグズのマザーベースにおける ”パス・オルテガ・アンドラーデ”との交流イベントのうち、 SIDE OPS『惨劇の生存者06』で入手できる写真『ガジョピント』を パスに手渡した際に発生するイベントで、彼女の口からセシールの名前が挙がる。 その写真にはセシールの姿も写っている。 パスは写真を見ながら、セシールにガジョピントという料理の作り方を教えてあげた過去を振り返っている。
”セシール・コジマ・カミナンデス(Cécile Cosima Caminades)”という印象的な名前は、案の定ネタ要素として仕込まれたものであり、 シリーズの生みの親である小島秀夫監督に因んで『小島、神なんです』という日本語を連想させるものである。 これはただ暗示されるだけに留まらず、 MGSPWのセシールのブリーフィングテープ『自分について>「セシール・コジマ・カミナンデス」』にて 明確に言及され、登場人物たちのコミカルな会話を聴くことができる。 セシールとスネークの会話に乱入したカズヒラ・ミラーは 日本人の母親を持つ日系アメリカ人であり、 彼は『コジマ・カミナンデス』という名前の発音が日本語にそっくりなことに気付くと、 英語では『Kojima is god.』に当たることを2人に伝える。 ミラーが『コジマ・イズ・ゴッド[注]』と叫ぶと、 セシールもそれに合わせて同じ言葉を大声で連呼していた (その様子にスネークはただ戸惑っていた)。
彼女の名前は、一応あり得なくはない名前としてその根拠が提示されている。 まず『コジマ(Cosima)』については先述のテープで 実在の人物として、19世紀にヨーロッパで活躍した作曲家、思想家である”リヒャルト・ワーグナー”の2番目の妻 ”コジマ・フランチェスカ・ガエターナ・ワーグナー (Cosima Francesca Gaetana Wagner)”を例に上げている。 『カミナンデス(Caminades)』については、 そもそも彼女のキャラクターデザインのモデルになった同名のフランス人女性が存在する[注]。
彼女は祖国フランスに対する誇りを強く持っている愛国者であり、 MGSPWのブリーフィングファイル『フランス』では スネークに対してフランス文化の素晴らしさについて熱弁。 彼女は”パリ”の街を愛しており、『最先端のモード、世界最高の食事、優れた感性の人々が集う、文化と芸術の都』と称す。 特にお菓子には目がないらしく、自分の好きなフランスのお菓子をこれでもかと挙げ連ねている。 フランスにゆかりのある映画も好きなようで、『シェルブールの雨傘(The Umbrellas of Cherbourg/仏語:Les Parapluies de Cherbourg/1964年)』、 『ジャッカルの日(The Day of the Jackal/1973年)』の2作が話題に上がっている。 また、祖国の政治や歴史にも精通しており、 『外人部隊』の存在や、武力によって立憲政治を守り抜いた過去、核の保有などについて スネークと議論し、真摯な考えを示している。 フランス出身という皮切りで多く哲学者の名前も挙げており、『人生を豊かにしてくれる』と哲学に対して前向きな姿勢を示している。
だが祖国愛が強すぎるせいか自分に都合の良いように考えてしまう節もあるようで、 フランスで活躍した画家”ピカソ”がスペイン人であることや、 自分が一番好きだというお菓子”マカロン”が元はイタリア発祥である可能性が高いことを スネークから指摘されると、 誤魔化したり、不機嫌になる場面が見られた。
MGSPWのカセットテープ『パスの日記』の”その3”で パスとアマンダからセシールが”ガジョピント”という 中米でよく知られている料理の作り方を教わる様子が語られているが、 その中でパスはセシールについて『フランス人だけあって、料理自体は得意らしい』と評している。
MGSPWのカセットテープ『パスの日記』の”その3”において パスの視点でアマンダを含めた女性3人で恋愛話をする様子が語られている。 それによるとセシールはかなり恋愛経験が豊富らしく、アマンダに様々なアドバイスをしていたらしい。 その際、パスに対して『スネークが好きなんでしょ?』と問い詰めつつ、 スネークについて『彼、なかなかセクシーよね』と評価していたことも語られた。
喫煙者である。劇中では喫煙シーンは観られないが、 MGSPWの第二章では 自分を救助してくれたスネークに対して煙草を吸いたいと話し、 続けて『フランス製の両切り』が好きだという嗜好を明かしている (”両切り”は両端が切り落とされフィルターや吸口の付いていない紙巻きタバコのこと)。
彼女は鳥類だけではなく、動物全般の鳴き真似を特技とする。 MGSPWの劇中では”ケツァール”の鳴き真似で プレイヤーのミッションをサポートする場面があるが、 ブリーフィングテープ『ケツァール』では 鶏(ニワトリ)、猿(サル)、羊(ヒツジ)、豚(ブタ)、ゴリラ、ウサギの鳴き真似を披露してくれる。 スネークも結構ノリノリでその声真似を楽しんでいる様子である。 また、同作の第二章でIDカードを探すミッションの際、 無線連絡をすると『間違えた』としてケツァールでなくブタの鳴き真似をすることがある。
ちなみに動物の鳴き真似はセシールの声優を務めた”小林ゆう”氏の特技でもあり、 彼女の現場でのアドリブによってシナリオが追加された経緯がある[注]。
MGSPWにて、 第二章でセシールをマザーベースに迎えるとゲームシステム上もマザーベーススタッフとして追加される。 肩書は『鳥類学者』。ミッション効果のあるスキルが設定されているが、ミッションへの出撃は不可能である。 ステータスは以下の通り。
LIFE | 2500 |
MNTL | 2500 |
GMP+ | 2545 |
実戦 | E |
研究 | D |
糧食 | A |
医療 | C |
諜報 | A |
射撃 | - |
リロード | - |
投擲 | D |
設置 | C |
歩き | - |
走り | - |
格闘 | E |
防御 | D |
スキル | |
バーダー |
【ミッション効果】
|
また、彼女のステータス画面から『モデルビューア』モードでセシールの3Dモデルが鑑賞できる。 さらに、第四章までクリアすると解放されるEXTRA OPS:067『パスとデート』でSランクを取ると その3Dモデルが水着姿になる(もう一度Sランク以外を取ると元に戻る)。
MGSPWの第二章『英雄の幻影』における ”カズヒラ・ミラー”の『(パスと比べて)年齢(とし)も10は離れているだろう』という発言より。 実際にはパスは年齢を偽っているが、この時ミラーらはまだ 彼女を16歳の少女として扱っている。
MGSPWにおけるセシールのブリーフィングファイル『フランス>パリ』にて、 スネークの『ここに来る前は、ずっとパリだったのか?』という質問に『ええ』と答えている。 日本語版のセリフだとやや表現が曖昧だが、 英語版ではスネークの質問で『whole life(生涯)』という表現が使われているため、 パリが出身地と考えて問題ないと思われる。
小島秀夫監督の公式Twitterより。 MGSPWの『公式設定画集』にもカミナデス氏の写真が掲載されている。 同氏はMGSPW発売当時、パリにあるコナミデジタルエンタテインメントのフランス支社の社員であり(2011年に退社)、 同作の広報業務に参加、日本における発売記念イベントにも姿を見せていた(参考サイト(ねとらぼ))。
ちなみに同氏の名前はゲームの登場人物と同じく『Caminades』であるが、 小島監督の投稿では毎回『カミナデス』というカタカナ表記が使われているため、本頁でもそれに準じる (ネット記事によっては『カミナンデス』という表記もあり)。 ネイティブの発音が”どう聞こえるか”を表すカタカナ表記には特に間違いというものはないため、 ゲームの方ではコミカルネタを仕込むために『ン』が加えられたのだと思われる。
カセットデンスケは、ソニーが1973年に発売した、コンパクトカセットを使用する可搬型(ポータブル)録音機の商標。 もともとは1950年代から展開されていた放送局向けの取材用録音機の愛称として既に『デンスケ』が使用されており、 その名称は横山隆一氏による漫画『デンスケ(1949年~1955年/毎日新聞にて連載)』に由来する。 ソニーの登録商標でありながらも、一般人の間では 他社のものも含めた可搬型録音機全般の愛称として『デンスケ』が使用される場合がある。
『コジマ・イズ・ゴッド(Kojima is god.)』というフレーズは、 実はMGSPWが発売する以前から存在する。 メタルギアシリーズは国内はもちろんのこと、海外にも熱狂的なファンが多く、 英語圏のイベント等でしばしば『Kojima is god.』のフレーズが叫ばれていた。 『メタルギアソリッド4 ガンズ・オブ・ザ・パトリオット(2008年発売)』が発売した当時、 ヒストリーチャンネルという衛星放送チャンネルの 一番組である『時代の響き』にて、同作の開発にあたる小島秀夫監督のドキュメンタリーが放送されたが、 その中で世界各国のファンの様子も映し出され、大勢のファンが『Kojima is god.』を叫ぶ映像を観ることができる。
MGSPWの公式メイキング映像vol.6『キャストインタビュー Part2』にて 小林氏本人が証言している。その中では合わせてケツァールの鳴き真似を改めて披露している。 映像は同作の公式サイト(2020-05-12現在)の 『SPECIAL>メイキング映像』から閲覧可能である(ただし、Flash Playerが動作する環境が必要)。