メタリックアーキア(Metallic archaea)は、メタルギアの正史シリーズに登場する、有機物の代わりに金属を代謝して生命を維持する性質を持った古細菌の総称。 この細菌は、多くの生物が生存不可能なほどの高温、高酸性、高アルカリ性、放射線域などといった環境の中でのみ増殖する ”極限環境微生物”と呼ばれる始原菌(アーキア)の一種である。 ”コードトーカー”と呼ばれる アメリカ大陸先住民族・ナバホ族出身の微生物学者の研究によって1970年代に発見された。 登場作品は、1984年の世界を描く『メタルギアソリッドV ファントムペイン(2015年発売/以下、MGSV:TPP)』。
メタリックアーキアには様々な種類が存在し、 劇中ではそれらが金属を代謝する過程で発生する化学反応や、その排泄物として生成される物質を、 主に軍事目的で利用している様子が描かれている。 各種メタリックアーキアはコードトーカー曰く、 彼が発見した菌類の中から選定を行い、継代と改良を繰り返すことで生み出されたものの眷属(一族)であるという。
劇中で特に重要な要素として登場しているのが、”ウラン濃縮アーキア”と呼ばれる種類である。 この種は放射性物質であるウランの同位体[注]の一つである”ウラン235”を選択的に代謝し、濃縮ウランを生成する。 核兵器を製造する際には核分裂を起こしやすいウラン235の割合が非常に高くなった”高濃縮ウラン”が必要であるのだが、 一般的に天然に存在するウラン鉱石ではウラン235の割合がとても低い。 そのため人工的にこの高濃縮ウランを生成する必要があるのだが、 ウラン濃縮アーキアは核兵器製造に使用できるほどの高濃縮ウランを生成することができるのだった。 もともとコードトーカーは兵器利用を目的とはしておらず、 ウラン鉱山や核実験場の影響で汚染された自分の故郷の土地を除染するためにウランを食べる微生物の研究を行っていたのだが、 米国の非政府諜報機関『サイファー』の構成員である”スカルフェイス”という男が これに目をつけ、コードトーカーの一族を人質に取ることで彼に核兵器製造のための微生物研究を強要したのだった。 スカルフェイスは自身の計画の一環として、 ウラン濃縮アーキアを利用した簡易的な核兵器システムを世界中に蔓延させることを画策していた (彼の計画の詳細については、人物事典の『スカルフェイス』のページを参照)。 MGSV:TPPのラストに表示される年表においては、 1973年の欄に『コードトーカー、ウランを代謝する始原菌を発見』とあり、 これが彼と金属を食べる始原菌の出会いであったのだと思われるが、 先述のようにメタリックアーキアがコードトーカーによる選定や改良を受けていると語られていることから、 兵器グレードの高濃縮ウランを生み出す種が誕生したのは、彼がスカルフェイスの配下に置かれてからである可能性が高い。
また劇中で、同じくコードトーカーの研究で見いだされた生物として 『覆い尽くすもの』と呼ばれる寄生虫が登場しているのだが、その中には体内に複数種のメタリックアーキアを宿している種が存在する。 その覆い尽くすものが宿していると語られるメタリックアーキアが、 金属を急速に酸化させてそこから受け取った電子をエネルギーとする”腐食性アーキア”という種と、 逆に酸化した物質を”還元[注]”させることでそこから新たな金属を再構築する種(こちらの名称は提示されていない)である。 スカルフェイスがその力とした『スカルズ』という特殊部隊の隊員たちは 体表に覆い尽くすものを寄生させることで様々な特殊能力を獲得しているのだが、 その中で先述したメタリックアーキアを利用したものと思われる能力を確認することができる。 MGSV:TPPのEpisode28『コードトーカー』およびEpisode29『極限環境微生物』にて スカルズの襲撃により軍用ヘリがサビだらけの姿になり落下させられるシーンがあるのだが、 これについてはカセットテープ『メタリックアーキア・1』のトラック『メタリックアーキアとは』において 腐食性アーキアによるものであると明言されている (プレイヤーの味方である”オセロット”は、 ヘリの残骸から腐食性アーキアを取得し、捕虜である”ヒューイ”への尋問に使用している)。 一方、金属の還元を操る種を利用した能力については明確に言及されていないが、 スカルズがプレイヤー=”ヴェノム・スネーク”の前に立ちはだかった際に 何もない空間から銃器を出現させる演出があり、 これはメタリックアーキアの能力によって酸化した金属を還元によって再構築しているのだと推測される。 なお、腐食性アーキアについては、先のウラン濃縮アーキアに関する説明の中で記述した スカルフェイスによる核兵器システムの起爆装置無効化機構にも用いられている。
MGSV:TPPで描かれる1984年の事件が収束した後、 メタリックアーキアが後世でどのように扱われていったのかについては言及されていない。
人間は様々な種類の化学元素を、その原子核を構成する”陽子”の数によって区別しており、 例えば陽子数が92個の元素を”ウラン”と呼ぶ(陽子数はそのまま原子番号としても使われる)。 このように陽子数が同じで同名の化学元素の中でも、 原子核を構成するもう一つの粒子である”中性子”の個数が異なるものが存在し、 それらを区別した時の関係性のことを”同位体”という。 各同位体を識別する際の”ウラン235”のような名称における数字は、総合的な質量数を表している (中性子の数が異なるので、当然元素の質量も異なる)。
基本的に陽子数が同じ元素は、”化学反応”の上では同じ結果を見せるため、中性子数による区別は不要である。 だが、化学反応とは異なり原子核の分裂や融合が発生する”核反応”においては 中性子数に応じて反応のしやすさなどで違いを見せるため、区別が必要である。 つまり、『厳密には各同位体は”別の物質”であるのだが、 ”化学”という範囲の中においては同じ物質として扱っている』と言うことができる。